取材記事
2013年5月30日 木曜日
スギ花粉喘息 取材記事
肺に微小粒子が侵入
スギ花粉の大きさは、だいたい30マイクロ?(0・03ミリ?)。このサイズでは通常、鼻の粘膜にキャッチされるので、気管支や肺に付着することはない。では、なぜスギ花粉が多く飛ぶと喘息発作が増えるのか。
呼 吸器科・アレルギー科「寺尾クリニカ」(東京・新宿)の寺尾一郎院長は「実は近年、スギ花粉の周りに付いている『オービクル』という物質が関係しているこ とが分かってきたのです。容易にはがれ、大きさは0・5―1マイクロ?。空気中をフワフワ漂い落下しない微小粒子サイズなので肺の奥まで入りやすい」と説 明する。
オービクルは花粉内部と異なる抗原性をもち、吸入されることで喘息が誘発されるという。
花粉症も引き金に
ただ、寺尾院長は「あくまでオービクルは誘因のひとつ」とこう話す。
「花粉症で鼻が詰まれば口呼吸になる。すると口腔内が乾いて、温度や湿度が保てなくなり、風邪を引きやすくなる。風邪は喘息発作を招きます。また鼻水がのどに流れ、気管を刺激して咳や喘鳴を起こすこともある。花粉症が引き金になることもあるのです」
加えて、アスファルトが多い市街地では、飛散した花粉がいつまでも残存する。すると次第に細かく粉砕された花粉がシーズン後期では、「空気中に漂うサイズになって喘息を誘発させる可能性がある」という。
スギ花粉による喘息への影響は、5―6月ごろまで持続するとみられているから要注意だ。
空気清浄機で除去
他にも春の喘息の誘因には、気温の寒暖差、年度末の過労やストレスなどの影響もあげられる。予防には、「風邪予防」「スギ花粉対策」「日常の体調管理」が肝心だ。
室内に入り込むスギ花粉本体は床に落ちるので濡れタオルなどで除去しやすい。が、「空気中を漂うオービクルなどの浮遊粒子状物質(10マイクロ?以下)は空気清浄器でないと除去は難しい」(寺尾院長)という。
たとえスギ花粉喘息であっても症状は、咳、タン、喘鳴、呼吸困難と従来の喘息と変わりはなく、治療も同じで"吸入ステロイド薬"が基本だ。
寺尾院長は「スギ花粉症を甘くみてはいけません。生命にも関わる全身症状を起こしうる病気という認識が必要です」と忠告する。
春に喘息発作が増える誘因
★スギ花粉表面に付着する微小粒子状物質「オービクル」の吸入
★花粉症による鼻閉で口呼吸になり、風邪を引きやすい
★花粉症による鼻水がのどに流れ、気管が刺激される
★粉砕された花粉粒の破片の吸入
★外気温の寒暖差
★年度末の過労やストレスによる体調不良
投稿者 寺尾クリニカ